2011年 03月 28日
災害医療と薬剤師ー各論(III)
「遠藤浩良です。
今回の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故について、市中の科
学者・技術者の一員たる薬剤師としては、特に学生時代から「放射性医薬品」
などの講義や実習を通じて、”放射性物質”、”放射線”、或いはいわゆる”放
射能”等々について勉強してきた点で、一般の市民に対してはもちろんのこと、
非生物系の通常の科学・技術者よりは遥かに詳しいはずの人間なのですから
(薬剤師国家試験の出題範囲に間違いなくこうしたことが入っていたので、かっ
て国試受験に当たっては一所懸命に勉強したことを想い出して下さい)、誤った
風評に惑わされて困惑している市民(関東の居住地からから関西の親戚宅に
”疎開”した人が現実に居ます)に対しては、出来る限り冷静に、正しく対応しな
ければいけません。
そのためには我々自身が正しい情報源を確保しておかなけれなりませんが、
その一つとして、放射線防護のプロの集まりである日本保健物理学会の有志
がこの3月25日にボランティアとして立ち上げた出来たてホヤホヤのWebサイト
◆ 専門家が答える 暮らしの放射線Q&A◆ http://radi-info.com/
があります。
放射線の人体への影響/食物への影響/水への影響 などの他、質問に
答えるコーナーも設けられています。
例えば、東電福島原発の20キロメートル圏内の富岡町などでは、独自の
判断で既に安定ヨウ素剤を住民に配布し、子供に服用させてしまった人も出る
ヨウ素剤配布で混乱、誤った服用指示も
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110321-OYT1T00020.htm
などの混乱が起こっていますが、この問題については
ヨウ素剤はどこで買えるのでしょうか?どのくらいの量・期間
摂取すればいいのか?ヨウ素剤の副作用はないのか?
ヨウ素剤は、市販されていることは少なく、地方自治体等を通じて
服用が必要な場合に配布されます。ヨウ素剤の服用量は大人で
は毎日1回100ミリグラム、幼児は同50ミリグラムの服用が推奨さ
れています。副作用もありますので、服用期間は専門家の指示に
従ってください。ヨウ素剤の副作用としては、ヨウ素過敏症の人に
は発疹など症状が現れることがあります。また妊娠中の場合、胎
盤関門を通じ胎児の甲状腺腫及び甲状腺機能異常を起こすことが
あるので、医師の指導の下に服用してください。放射性ヨウ素を呼
吸や食品を通じて大量に体に取り込んだ場合、甲状腺に集まって、
甲状腺結節や癌などの害を及ぼすことが知られています。ヨウ素
剤と呼ばれているヨウ化カリウムは、非放射性の安定ヨウ素で甲
状腺を飽和することによって、後から入ってくるの遮断してそのよう
な障害を防止する働きがあります。放射性で無いヨウ素の飽和作
用で放射性ヨウ素を吸収することを防ぐことを目的としています。
40歳以上については、放射性ヨウ素での被曝による甲状腺ガン
等の発生率が増加しないため安定ヨウ素は必要ないとのことで
すが、本当でしょうか。
必要性の程度は低いと考えられます。原子力安全委員会が定める
「原子力施設等の防災対策について」には次のとおり記載されてお
ります。放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく後、甲状腺がんの発生
確率は、乳幼児の被ばく者で増加する場合があるが、40歳以上で
は増加しないため、年齢に応じて、安定ヨウ素剤の服用対象を定め
る必要があります。
のような具合で回答していまして、個人的にはいろいろ意見の分かれるとこ
ろが出て来るかもしれませんが、総体的にはまあ有効に活用できるサイトか
と思いますのでご紹介します。一度訪ねてみてお考え下さい。」