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カテプシンK物語~骨吸収アッセイ法の確立(前)~

破骨細胞の働きを明らかにするためには、その活性を評価する方法がどうしても必要でした。

英国のチャンバーズ博士は1986年に、骨片上で培養した破骨細胞の吸収窩を走査顕微鏡で測定して、その活性を評価するという新しい方法を開発しました。
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 チャンバーズ博士が開発した骨吸収評価法で、窪みの上部に破骨細胞がまられます。

しかしこのアッセイ方法にも問題がありました。その一つは骨片の使用です。石灰化の程度により破骨細胞の吸収の程度は異なります。したがって均一でない骨は必ずしも適した材料ではありませんでした。また様々なサイズの既存の窪みがあり、吸収窩との区別に苦労することもありました。しかも吸収窩の測定に走査電子顕微鏡を使用しており、評価には長時間を要したのでした。

そこで我々はチャンバーズ法の改良に着手しました。まず手がけた事は骨に代わる材料選びでした。均一に石灰化した材料として、鹿の角(骨)、クジラの歯等、種々検討した結果、骨に近い歯の象牙質が最適と判断し、象牙を使用することにしました。

大学近くの象牙の卸屋さんには、輸入が禁止されているにもかかわらず、沢山の象牙が保管されており、均一な材質の象牙を安定的に提供されることが確約され、材料の問題はやっと解決しました。この材料は国内ばかりでなく、国外の大学や会社で使用されました。

ご承知のように象牙の輸入はワシントン条約により禁止されています。例の卸屋の情報ルートからでしょう。象牙は研究面でも使用されているとNHKで紹介されたこともありました。

自際の使用方法は次回にご紹介します。

骨吸収アッセイ法がこの映画でご覧になれます。
by rijityoo | 2012-07-17 22:19 | カテプシンK物語(23) | Comments(0)