2010年 09月 18日
毛髪のコーチゾール量の分析から心臓発作が予見(遠藤日記)
ではありません、ただ少々忙しかっただけですのでご休心下さい。
さて、高齢者のカルシウム・サプリメント摂取は、骨の強化に効果がない
ばかりか、心臓血管病リスクを増すかもしれないとの報告が、英国医師会雑
誌 BMJ の7月29日付けオンライン版に掲載されましたが、我が国ではサプ
リメントがメディアの大スポンサーであるためか、これが日本では殆ど報道さ
れていないことを、少し前にご紹介しました。
今回は、心臓発作関連の続きで、毛髪中のコルチゾールを分析すればス
トレスによる心臓発作を何カ月も前に予測できるかもしれないという最新の報
告について、これも亦日本では殆ど採り上げられていないのでご紹介します。
すなわち、仕事や生活、あるいはお金の悩みなどのストレスが心疾患の
リスク増大と関係しているのは分かっているのですが、慢性ストレスを測る良
い生物学的指標がなかったので、心臓発作の起こる危険性が高い人を何か
月も前から割り出すすことは不可能でした。
これまでストレスによる心臓発作を予測するため様々な方法が検討され
ましたが、例えば、ストレスホルモンであるコルチゾールの血液、尿、あるい
は唾液中の濃度を測定しても、数時間前からせいぜい数日前までのストレス
状態しか推測できず、長期間のストレスレベルを追跡することはできません。
それで、毛髪は、血液中の濃度が薄い物質についても、それらを濃縮して
蓄積するという意味で実は排泄器官という側面を持っているので、以下の報
告では、時々刻々に体内環境の状態とその変化をを記録している生物学的
指標として、毛髪に着目したのです。(水俣病公害患者の毛髪中に、食べた
水俣湾の魚介類から血中に入ったメチル水銀が蓄積されていた事実などか
ら、日本人は誰でもこのことをよく知っていますから、我々にとってはそれ程
特記すべき着眼ではありませんが)
そこで、イスラエルのクファルサバ病院に心臓発作で入院した患者と、心
疾患以外で入院した患者、それぞれ56人ずつの毛髪を採取し、カナダ・オン
タリオ州の西オンタリオ大学との共同研究により分析したところ、心臓発作の
入院患者の髪の方がコルチゾールが多いことが分かったのです。
ヒトの毛髪は1カ月で約1cm伸びるので、6センチ分を分析すれば半年間
のストレスレベルを追跡できるわけで、そのレベルが高ければ心筋梗塞発作
リスクの上昇が何カ月も前から予測可能になるというわけです。(遠藤日記から)