2011年 06月 03日
毎日新聞夕刊コラムに・・・・
憂楽帳:消えた崖
「静かな田園地帯で、過去数百年にわたって、地震や台風、津波などによる大きな被害を受けたことがない」
福島第1原発を紹介する東京電力企画の映画「黎明(れいめい)」。建設までの記録だ。インターネットの「科学映像館」(http://www.kagakueizo.org/)で見て驚いた。
着工前の現地は、太平洋に面した高さ30メートルもの断崖の上の台地だった。冒頭のナレーションは、津波に限れば、誇張とは言えないだろう。
だが、現在はニュース映像で何度も見るように、第1原発の敷地は、海面とほぼ変わらない。その答えも映画にある。
建設予定地で、ボーリング調査を90カ所で実施。原子炉の予定地の地下では、大規模な試掘も行い「地表面から30メートル以下の地層は、建設に適した厚い泥岩層であることを確認した」。
その結果、削られた約30メートルの崖。だが、地盤の問題だけでなく、海からの取水など効率も優先したのではないか。地形をがらりと変えて建てた原発。海に面した一部だけでも、自然の地形を生かしていたら……。【神崎真一】
毎日新聞 2011年5月28日 西部夕刊