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久米さんの科学映像便り

カテプシンK物語~破骨細胞の起源と形成~

The BoneIIは、多核の巨大細胞が単核細胞の融合によって形成されることを世界で初めて明らかにすることに成功しました。
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多核の破骨細胞は癒合によること示したモンタージュ写真です。
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骨の科学映画 米国代謝学会で上記映画を上映。3回も上映,その都度、会員は廊下まであふれました。まさに「君の名は」現象でした。

この映画の製作にはちょっとした面白い出来事がありました。これまでラットの培養細胞にVDを加えると、破骨細胞が形成されるとの報告がありました。そこで我々も同様の実験を行ったいたのですが、この系では、破骨細胞の形成頻度は少なく、しかも形成に長時間かかりました。したがって癒合の瞬間を映像化するのは厳しい感じがしておりました。

そのとき、動物舎にラットの子供がいなくて、制作者はマウスが使ったんです。2,3日後には画面いっぱいの多核細胞が形成されたではありませんか。上図はマウスの細胞から、多核細胞形成の瞬間をとらえた貴重の映像です。先人の論文を疑うわけではありませんが、確認してみるとことは大切であると、再認識しましたね。一度いい結果が得られたら再実験は行わないとは、留学中、よく耳にしました。米国の効率主義の欠点かもしれません。

非常に近いマウスとラットの間に、こんな大きな違いがあるとは、まさに想定外のことでした。これからの研究にはマウスが最適な動物であることが分かったというおまけもあり、以来世界中でこの分野の研究にマウスが使用されることになったのです。



ではこの単核細胞は?という疑問も当然生じますが、その解明については当時自治医科大学で血球細胞の分化に関する研究に従事され、この分野の第一人者であった須田年生先生のご協力を得ました。

破骨細胞が血球幹細胞由来であると仮定し、その仮定が正しければ必ず破骨細胞が形成される実験系を組んでいただきました。その結果、破骨細胞はリンパ球や白血球と同じ細胞から出来ているということを初めて明らかにし、1989年、世界に向けてこの成果を発信しました。

久米川正好: Genaration of osteoclasts deirved from hematopoietic stem cells.(スイス、ダボス 1998年4月)

この研究には学内外の若い研究者が、時には栃木県下野市にある自治医科大学で実験を行い、さらに茨城県つくば市の筑波大学から、埼玉県坂戸市の明海大学まで細胞を車で運び、夜を徹して形成実験を行う、といったように、活発かつダイナミックに動きまわった一時期でもありました。協力してくれた彼ら研究者たちの活動の場面ひとつひとつが現在も鮮明に思い出されます。本当に楽しい時期でした。彼らは現在も国内外の大学で仕事に励んでおり、あのころは楽しかったという電話やメールがいまでも届きます。
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その時の実験の模式図。血球幹細胞のコロニーを自治医科大学で得たのち、さらに筑波大学でセルソテイングして個々細胞から自治医科大学でコロニーを。このコロニーから坂戸市の明海大学で破骨細胞形成実験。関東圏を夜中に細胞は動きまわり、やっと成功!!

以前から我々は特殊な培養装置、Roseの還流措置を使って、多くの方と共同研究を行ってきました。今回取り組んだ須田先生との研究では大変良好なコラボレーションが発揮されましたが、研究には多くの情報と的確なコラボレートが重要である、ということを再認識した一例でもありました。

参考文献
Generation of Osteoclasts From Isolated Hematopoietic Progenitor Cells
Blood, Vol 74, No 4 (September), 1989: pp 1295-1302 1295
By Noriyoshi Kurihara, Toshio Suda, Yasusada Miura, Hiromitsu Nakauchi, Hiroaki Kodama, Kenji Hiura, Yoshiyuki Hakeda, and Masayoshi Kumegawa

Blood 74:1296-1302,1989
by rijityoo | 2012-07-17 09:26 | カテプシンK物語(23) | Comments(0)

今なぜ、科学映像館か? その舞台裏を語ります。