2012年 07月 18日
カテプシンK物語~骨吸収アッセイ系の確立(後)~
96穴プラステイックシャーレ、象牙片(44mm径)のための書類の穴あけパンチャー使用、吸収窩の染色、吸収窩面積の測定等々、次々と解決していきました。パンチャーを求めて文具屋、家庭用品売り場に出向いたこともありました。時には学会時、米国の文具屋まで足を運びました。
(1)まず、同サイズの象牙片を多数製作ることから始めました。15mm角の象牙棒から機械的に切片(あつさ0.5mm)を切り出し、書類の穴あけパンチャー(直径4mm)で円形の材料を作りました。超音波で洗浄後、一晩ガラス板に挟んで平らにしました。この材料を確保するまでに半年を要したでしょうか。
(2)この切片を96穴(直径4mm)のプラステイックシャーレに植えこんだ後、細胞浮遊とともに各種の測定用の薬剤を加えて2日間培養します。
(3)自作のラバー棒で細胞を除去して2,3回洗浄したのちに酸性ヘマトキシリン液で1,2分染色して網目が刻まれた接眼レンズを用いて吸収窩面積を測ります。この方法は個人差がなく、短時間で積算できる効果的な測定方法となりました。酸性ヘマトキシリン液は吸収窩に残された骨の基質を鮮明に染め上げる染色液のあることが明らかになりましたが、これは偶然の出来事でした。この液は他の目的のために使用していたものでした。
ピットアッセイの系がこの映画でご覧になれます。
約1年半かけて開発したこの系は国内の大学や企業の研究室へと広まり、ひろく使用されることとなりました。当時見学者が毎週のごとく来室し賑わっていましたね。スイスの企業家からわざわざ見学者が来てくれ、びっくりしたこともありました。それぞれ企業のの使用目的もわかり、それだけでなく企業側も種々ユニークなアイデアを提供してくれ、さらにはこの系は多額の研究費をバックアップ結果をもたらしてくれて、まさに「一石三鳥」の系となりました。