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カテプシンK物語~破骨細胞を求めて~

骨の分野でも、大量の細胞が得やすい骨芽細胞に対する分子生物学的な研究は既に始まっていましたが、一方で破骨細胞の研究は全く手が付けられていませんでした。後発組の我々が挑戦のターゲットとしたのは当然破骨細胞でした。

担当者である手塚建一助手(現:岐阜大学大学院医学系研究科准教授)の赴任も内定し、大量の破骨細胞を如何にして得るかが最大の課題となりました。いよいよ挑戦の始まりです。

前にも述べていますが、「幹細胞から形成された破骨細胞様細胞を用いては」との案も一時期上がりました。しかしこの細胞は破骨細胞「もどき」であり、すべての機能を備えた真の破骨細胞ではありません。細胞数と純度の点からも納得できず、また将来もし良好な結果が出た場合でも必ず課題が残ると判断し、この使用を断念しました。そこで動物から正常な破骨細胞を得ようと決断し、その挑戦を始めたのです。その第一歩は使用動物の選択でした。

最初の候補はマウスでした。しかし出産直後のマウスはあまりにも小さく、多くの細胞採取には適さないと判断してマウスの使用を断念しました。次いでニワトリも考えましたが、鳥類であるニワトリの破骨細胞は哺乳動物とは異なることから除外されました。

このほかに仔牛も考えたのですが、安定的に確保するには制約がありそうと判断してこれも除外。その次には豚に目を向けました。ちょうど大学の近くには養豚場があったことから、死産直後の仔豚を入手することができました。しかし死んだ直後の仔豚から得た細胞はすでに死滅しており、これも安定的な使用は困難と判断しました。

最後に選んだのがウサギ(家兎)の新生児です。これを選んだのは、骨がある程度大きいことと、そして飼育業者から指定の動物が安定的に提供されるということが理由として挙げられます。長野県の業者から週2回、実験日の朝に10羽ずつ、5カ月間提供してもらいました。およそ2,000羽にのぼるウサギの新生児がこの研究の尊い犠牲となったと思います。ある時研究室で犠牲となってくれたウサギたちを弔ったこともありました。

私も50歳代後半でまだまだ根気もあり、大学も管理職の役割も少なく、研究に打ち込むことのできた良い時期でした。

では次回は採取方法に話を進めます。
by rijityoo | 2012-07-22 11:08 | カテプシンK物語(23) | Comments(0)