2012年 07月 29日
カテプシンK物語~ひと巨細胞腫との出会い
もしこの腫瘍を破骨細胞の材料として考えていれば、もっと楽に破骨細胞を採取できたかもしれません。この腫瘍との出会いは全くの偶然でした。大阪大学医学部大学院生が彼の仕事についてのコメントを求めて来室したこともありましたが、あまり適格なコメントは出来ませんでした。
その頃ちょうど我々は映画「Osteocyte(骨細胞)」を制作していたところで、その一部を見て彼から貴重なコメントをもらいました。その後教室での会話中に、彼が使用していた資料はヒトの巨細胞腫であることが分かり、整形の分野ではこれが多く得られることから、腫瘍を提供してもらえることになりました。
巨細胞種との出会いでした。
その後大阪大学医学部から大量の腫瘍が提供され、ウサギと同様に巨細胞を分離してクローニングを行い、巨細胞に特異的な遺伝子を得ることが出来ました。
これとともに、タンパク質からカテプシンKを究明するにはウサギから得た破骨細胞では量的に間に合わず、この巨細胞腫が大きな力を発揮してくれたものです。
私たちは破骨細胞の収集にウサギを使用して苦労したのですが、しかしこれは必ずしも回り道しただけではなかったと思っています。あのノウハウがあって初めてヒトの巨細胞からも破骨細胞が得られたのです。またカテプシンKは腫瘍細胞ではなく、正常の細胞から得たものと言うお墨付きにもなりましたから。