2012年 08月 01日
カテプシンK物語~抗体の作製
さて、ヒトカテプシンKのcDNAクローニングには成功しましたが、我々のミッションはその特異的な阻害剤の開発ですから、次なる目標はその酵素タンパク質を得て、酵素学的特徴を明らかにすることです。
実は、ヒトカテプシンKのcDNAがクローニングされる以前に、私はウサギOC-2がコードするタンパク質(すなわちウサギカテプシンK)の組換え型酵素を調整すべく、大腸菌での大量発現を試みていました。ところが、発現自体はうまくいくのですが、組換え型カテプシンKは大腸菌内で不溶性の封入体を形成してしまい、これを可溶化し活性を復活させることにどうしても成功しませんでした。そこで、活性型酵素の調整はとりあえずあきらめ、活性はないものの一部可溶化できた酵素を抗原とし、抗カテプシンK抗体を作製することにしました。
ところが、抗体作製も一筋縄にはいきません。一般的に、ポリクローナル抗体を作製するためには、ウサギを免疫動物として用います。しかしながら、上述の組換え型酵素はそもそもウサギ由来のタンパク質であるため、ウサギに免疫しても異物とみなされない可能性が高いと考えられます。実際、大量に抗原を投与すれば何とかなるのではないかという安易な発想でトライはしてみましたが、案の定うまくいきませんでした。と言って、モノクローナル抗体を作製するのは素人の我々には敷居が高く、外注すれば費用がかさんでしまいます。

カテプシンKが破骨細胞に局在していることを示す免疫組織写真
ちょうどその頃、ニワトリの卵黄中に分泌されるIgYという抗体が注目されるようになり、抗体作製受託を請け負う会社も現れてきました。ニワトリであれば種がかなり離れるので、うまく抗体ができるのではないか・・・そう考え、早速外注で作製してもらうことにしました。予想通り、ニワトリを使うことにより、非常に特異性が高く、かつ抗体価も優れた抗カテプシンK-IgY抗体を得ることができました。この抗体が、その後、酵素の精製や酵素組織化学による局在解析のためのツールとして大活躍することになります。
コメント:何をやっても一筋縄ではいかないことがわかりました。