2013年 02月 06日
来日するザーラ・イマーエワの「子供の物語にあらず」

企画・製作:スタジオ「ハン・アーナ・ナフ」
2001年
ここの作品は、第2次チェチェン戦争の戦火を逃れて、チェチェン各地からアゼルバイジャンの首都、バクーに難民としてたどりついた子どもたちの証言をカメラに収めたものである。
作品の冒頭と末尾で少女が唄うのは、北コーカサス随一の美しい公園都市であった首都グローズヌイを頌えるもの。子どもたちのおぞましい体験の証言に交錯するニュース映像の
ロシアの大人たちの勝手な言い分が、この汚い戦争の本質を暴いて強烈なメッセージを発している。人口たかだか100万だったチェチェン人は、1994年に始まり、今もだらだらとゲリラ戦がつづく今日までに、大半を非武装民間人が占める25万の人命を失なった。そのうち4万人は、罪なき子どもたちである。
作者は、チェチェンの女性ジャーナリスト、ザーラ・イマーエワ(1961年生まれ)。彼女は、北コーカサスの山岳地帯の村、シャトイで産まれ、育って、映画監督となることを夢見た。しかし1980年代初めのソ連の映画人養成機関である全ソ国立映画大学(VGIK)は、あまりにも狭き門であった。しかし彼女の才気は、優るとも劣らぬ狭き門、モスクワ国立大学(MGU)ジャーナリスト学科への入学を果たさせた。学生結婚と育児を挟んだ10年にわたる在学中、彼女は後に、独立の指導者となるチェチェン人学生たちの地下運動に加わると同時に、映画への執念を燃やし続けて、モスクワのさまざまな映画スタジオにアルバイトの助手として出入りして、さまざまな知識や技術を修めていった。2008年現在も、亡命先のバクーで暮らし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の子どもたちを芸術的創作活動で治療するアートセンターDiDiの活動を続けている。