2013年 08月 20日
母校の同窓会誌からの原稿依頼があり・・・・
「小生は昭和39年大阪大学歯学研究科(7期生)を卒業、翌年9月からテキサス大学歯学部に留学、昭和43年9月に大阪大学歯学部口腔解剖教室に復学した。帰国後、歯学部も紛争に巻き込まれ、研究どころではなく、ちょうどその頃、創設された城西歯科大学(現明海大学歯学部)に招かれ、32年間勤めることができた。
城西歯科大学は大学紛争直後、創設された大学でもあり、旧来の講座制、特に研究面ではセントラル方式で自分に適した各自の研究室と大型機器類、写真室、洗浄室などいわゆる中研究室が設けられ、効率的に研究が行われた。大型機器室は原則として専門の技術者が管理しており、研究費もプロジェクト制で、相当裕福な研究費が支給された。国内外の学会出張費なども中央管理で、国際学会へも年2、3回出席したことも。学内外の共同研究も活発に行い、小生にとっては、本当に恵まれた研究環境であった。
研究成果をまとめてみると、テキサス大学に留学中に習得した、組織の機能を発現・維持出来る画期的な培養法「ローズの還流培養法」を持ち帰り、学内外研究者と共同研究し、数多くの研究成果を世界に発信した。この装置が縁となり、科学映画の父と言われた小林米作氏とともに骨の科学映画を製作。映画から得られた情報をもとに教室を上げて骨の研究に取り組むことに。破骨細胞の起源、その形成過程と骨破壊に関する酵素,すなわち「カテプシンK」の発見等、世界に誇れる成果を挙げることもできた。
カテプシンKは医学系の教科書にも記載されている。しかもこの酵素の特異的な阻害剤の発見を世界中の製薬会社が競っており、近々実用化されることが期待されている。この間、平成11年日本骨代謝学会長賞、平成14年には文部科学大臣賞を受賞している。
以上の成果をもとに、学校法人明海大学の推薦により、平成25年度「春の叙勲」において瑞宝中綬章を授与された。去る5月13日国立劇場にて勲記・勲章の伝達式に家内とともに参列、引き続き皇居へ参内して天皇陛下に拝謁の栄を賜り、感激の極みであった。これも偏に、大阪大学および明海大学時代の上司、同僚にも恵まれ、さらに学内外学会関係者のご指導、ご厚情の賜物と深く感謝している。今後はこの栄誉に恥じることのないよう一層精進いたす所存である。
平成13年大学を退職後、「骨の健康づくり委員会」を立ち上げ、骨の健康づくりの啓発活動行い、全国各地で28回のセミナーを開催して希望者の骨密度の測定と健康相談を行うとともに、ウェブサイト「骨の健康づくり委員会」(www.hone-kenko.org)企画・管理し、骨の健康づくりの情報を発信している。
この事業と並行して平成15年,科学映画の保存・活用のための新たな事業を始めた(www.kagakueizo.org)。すなわち、風化しつつある貴重な科学映画を収集デジタル化し、保管するとともにウェブで無料配信している。現在600作品の配信を行い、200万回以上再生され、幅広い分野で活用されている。配信している映画は生命科学から芸術、伝統芸能と幅広く、また最も古い映画は「ギージー博士の咬合調整法」である。
とりわけ原発事故の建設記録映画「福島の原子力」は負の遺産として評価され、国内外のメデイアで生かされることになる。昨年度からこれらの貴重な映画を国立国会図書館に収めると言った日本で初めて事業を行っており、気力のある限りこの仕事を行い、社会に貢献できればと願っている。最後に同窓会誌に掲載の機会を与えたいただいた谷口同窓会長に感謝するとともに、同窓生諸氏のご健闘を祈りたい。」