2016年 02月 12日
800記念作品は「ウェル ドレッサーをつくる」
ウェル ドレッサーをつくる
作品概要
製作:日本洋服技術者協会実行委員会
撮影:東京シネマ
協力:御幸毛織株式会社
1962年 原版白黒16mm 85分
つくる人:関根秀吉 着る人:藤原義江 まとめ役:磯島定二
関根秀吉は、かつて日比谷交差点きわにあった日活ビル地階アーケード街の名店
「テーラー関根」の店主で、腕利きの名テーラーだった。この記録は、齢70を
超しても、なお現役で頑張り、かつ後進の育成にも熱心な関根の卓越した技術を
記録保存しようと、現在の全日本紳士服デザイナー協会の前身、日本洋服技術者
協会が実行委員会を立ち上げ、記録に取り組んだ。
撮影と仕上実務を引受けた東京シネマのプロデューサー、岡田桑三も関根秀吉を
贔屓にしており、しばしば服を注文するだけでなく、英国に出張すれば、仕事の
合間にシビルローの服地店を訪れ、仕立を関根に頼むべく生地を選び、関根の使
用する仕立用のチョークを手配し、持ち帰ったりしていた。
1959年に関根は、服装生活社より「モーニングの裁縫:礼服の急所」を著し、雑
誌「洋装」1960年11月号の別冊付録に、~モーニングの裁縫:関根秀吉先生の妙
技公開~を出しており、これら出版の後、満を持し男子の最高礼服である燕尾服
の裁縫記録映像化が行われた。
モデルは、オペラ歌手、藤原義江が務めている。岡田桑三に聞いたところでは、
予算的には非常に厳しく、藤原には仕上がったドレスを贈呈するという条件で、
謝礼無しだったが、快く引き受けてくれたそうだ。帝国ホテルを根城とする藤原
にとって、日活ビルは至近であり、関根秀吉の精根込めて仕立てる燕尾服の逸品
は、藤原にとっても垂涎の一着だったに違いない。
撮影は丸5日間、実際に燕尾服を仕立てるテーラーの教本映像たるべく、勘所を
関根が、随所で語る85分の堂々とした長編作品である。