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避難対策案

「提言:避難対策としてのキャンピングカーならびに救助船の活用」を理事長ブログおよび久米川正好Facebookページ、科学映像館Facebookページに掲載してから僅か一日で5,000名強の方が記事を閲覧され、実に様々なご意見やご質問をいただいた。この大きな反響を受けて、今回はもう少し具体的な実行案を提示し、皆様のご意見を伺いたい。

I. 災害対策としてのキャンピングカー活用
キャンピングカーとは基本的には居住設備のある自動車で、旅行や住居などの目的に利用される。運転は普通免許可能。
(1)設備:長期間の使用を考え、三名の居住を想定し空調、食事、冷蔵庫、洗面、シャワー、ブラックタンク式トイレ、テレビおよびインターネット通信が可能である。非常時の使用では、GPSを用いて位置情報が把握できるほか、使用者情報を登録することで被災者の安否確認もできる。また管理センターなどと双方向通信も可能。
(2)平時の設置場所:都道府県下十数か所に「車両レンタルセンター(仮称)」を設け、キャンピングカーのメンテナンスを行い有料でレンタルする。台数および場所をインターネット上で登録しておき、災害発生時には即時かつ適切に災害場所に配備する。(県単位を超えた調整も行う。)
(3)災害時の設置場所:ハザードマップにより水害や津波を避けた運動パーク、公園、公共施設(可能な限り教育施設外)の駐車場を設定しておく。電気および水の供給スタンドを設置しておくが、平時の使用は課金制とする。さらに車両は災害の中心部を避けた場所に配備する。
(4)その他の車両として診療車、行政事務代行車両やキッチンカーなども整備する。診療車は会社等の検診にも利用できるようにするほか、キッチンカーは各地の料理教室にも活用する。

II.本事業に必要と見込まれる予算
(1)キャンピングカー:一台あたり約500万円×各県平均300台=約15億円。一挙に整備すれば、国単位で700億円(ただし中古車は200万円~)であるが、徐々に増設整備する。
(2)災害時の駐車場整備費:水道・電気のスタンド整備費用。
駐車場は公園、運動公園、公共施設の駐車場を使用。
(3)車両レンタルセンター(仮称):官民協力による出資で会社を設立する。

III. 本事業の利点
   5年前に発生した東日本大震災による東北地方の被災者の70%は、未だ仮設住宅での生活を送っておられるが、一方でその費用に驚いている。仮設住宅建設費が約500万円(家具は含まず)、家賃は無料だが電気、ガス、水道代は自己負担となっており、建設地は各地域の小中学校等のグランドを利用して建設されているため、被災者の生活にも、小中学生の授業にも支障を来している状況となっており改善が必要である。

さる2016年4月14日に発生した熊本地震による被災者の方々も、殆どが現在小中学校の体育館等におられ、286校でおよそ10万人に上る生徒が、連休明けにも授業を控えているとの報告もある。以上の諸点を踏まえ、今回のキャンピングカープロジェクトの利点を考えてみたい。

(1)災害発生時、被災施設から仮設住宅入居までの被災者の生活が学校等の一次的避難場所を必要とせず、即座に確保される。
(2)被災者はプライバシーが確保され、冷暖房、トイレ、食事、睡眠の質が保たれることで住環境が相当程度改善される。
(3)車両使用時にインターネットを通じて個人情報を登録すること、ならびにGPS位置情報との連携で被災者の安否と所在が明確になるほか、双方向の情報連絡も可能となる。
(4)車外での運動、交流等も活発に行えるため、エコノミークラス症候群を予防できる。
(5)被災地のサテライトにキャンピングカーの居住区を設けるためゴミによる公害、交通渋滞等の障害を緩和できるほか、周辺住民からの援助も円滑に行われる。
(6)キャンピングカーは災害時のみならず平時にも使用できることから、家族やグループ旅行にも活用できる。
      
四方を海に囲まれ水資源や海洋資源に恵まれ、豊かな四季に恵まれている我が国は、同時に地震や台風災害からも決して目を逸らすことのできない国でもある。この機会に「備えあれば憂いなし」の言葉をいま一度思い起こして、キャンピングカーといった既存のツールを有効活用する可能性を防災関係者全員で考えることに大きな意義があると思い至った次第である。本稿はひとつの提案に過ぎないが、これを嚆矢として自由な議論が行われ、我が国独自の災害対策モデルが構築されることを期待したい。ひいては世界に冠たる災害対応モデルが構築され、海外諸国にも技術支援ができるようになればと願っている。
by rijityoo | 2016-04-27 12:49 | Comments(0)