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久米さんの科学映像便り

一世の素顔を復元した東京光音、松重所長の言葉

「一世の素顔」のデジタルリマスター制作について記する前に、映像作品を含む古い視聴覚資料全般が直面している現状について触れたい。

昨今、多チャンネル放送が普及する一方で供給コンテンツ不足とも言われるが、映像資産たる貴重な作品の多くが公開されぬまま眠っている事も事実である。これらの作品はフィルムやビデオテープで残されているが、実は消失の危機に直面している。フィルムやテープは有機物、言わば生ものであるため、空気中の水分により化学反応を起こし劣化する。

この劣化現象を防ぐ事は困難で、最終的には物理的に再生不可能の状態となる。これに加え再生機の減少という問題もある。殆どのビデオ再生機は生産及びサポートも終了しているため、テープがあっても再生機が無いという状態が現実化している。フィルム映写機も同様である。この先貴重な映像資産を未来へ遺していくために、希少な再生機を整備し維持する事と共に、資料の修復復元技術を若い世代へ伝え継承させていく事が課題となる。

「一世の素顔」は現存するマスター素材がUマチックというビデオテープであった。Uマチックは1970年代中期から1980年代にかけて多く使われたテープである。再生機は当然のことながら希少であり、テープも経年劣化の影響で再生もままならない。

本作品の作業に於いては先ず徹底したテープクリーニングから始めた。テープそのものを最良の状態にすることで、ビデオ系ノイズの発生を抑えることが出来る。再生機も整備済み機材を所有していたため、問題なくデジタル化が出来た。
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次にこのデジタルデータのカラーコレクション作業を行う。カットごとにコントラスト、色調の鮮やかさを付け加えていく作業である。全体及び前後のカットとのバランスを取りながらの調整が必要で、手間と時間を要する作業である。同時に別ラインで音声の整音作業も行った。
一世の素顔を復元した東京光音、松重所長の言葉_b0115553_6542481.png
 
今回のようなリマスター作業は手間暇と独自のノウハウ技術を要するものであるが、弊社にとっては通常の作業である。寧ろ資料の劣化問題に目を向けて頂きたい。これまで修復不可能の状態まで劣化した資料を多く目の当たりにし、何ともやるせない思いを経験してきた。1本でも多くの作品を後世に遺すために役に立ちたいと言う思いを胸に、スタッフ一同日々の業務に当たっている。
by rijityoo | 2017-08-24 22:20 | Comments(0)

今なぜ、科学映像館か? その舞台裏を語ります。