2019年 04月 25日
ロマの人々とクルド民族―差別と排斥・迫害の歴史 (1)
ロマの人々とクルド民族―差別と排斥・迫害の歴史―
4月三水会報告 岡本好廣氏
岡本好廣氏プロフィール
早大卒・学生時代から生協運動に従事,
日本生活協同組合連合会常務理事、
(公財)生協総合研究所専務理事を歴任し、
現在、三水会常任幹事
2019年4月17日
内幸町・日本プレスセンター9階
日本記者クラブ小会議室
はじめに
三水会の古い会員に大利貴彦という方が居られた。日本長期信用銀行(長銀)にお勤めで、三水会では80年代には「金の話」「銀行、証券、グリーンカード」といった金融に関わる報告をされていた。その後バブルが進み、長銀が巨額の融資をしていた消費者金融の大手プロミスの経営が悪化すると、立て直しのために派遣されて社長として奮闘された。経営を改善して戻ると間もなく長銀自体の経営が破綻した。日本経済がどん底に落ちる前触れであった。
ここで大利さんは大きな転換を決意された。長い間の銀行員生活に終止符を打って研究生活に入ったのである。テーマは誰も予想しなかった「被圧迫民族の研究」であった。大利さんの研究方法は文献資料を読んだ後現地に行って調査し、その上で研究誌を作成する。自宅の離れに工房を作って数台のパソコンと印刷機、製本機を設置して、執筆、入力、校正、製版、印刷、製本を全部自分でやって完成させる。いずれも100ページから200ページに及ぶ力作である。
大利さんと親しかった私は横浜市金沢区能見台のお宅へ行って制作の工程を見せてもらったことがある。とても素人と思えない手の込んだ仕事である。こうした作業は1990年代後半から2000年の初めまで続き、数十冊の報告書を作り上げられ、その都度三水会のメンバーにも下さった。また三水会でもよく報告された。
「アメリカンインデアンの戦い」(1997年3月)
「蝦夷の歴史(アイヌの圧迫の経過)」(1998年10月)
「琉球の歴史」(1999年4月)
「ケルトとアイルランド」(2000年7月)
この頃から奥さんの認知症が進み、本人も癌に侵されて執筆が滞り始めた。2007年8月29日30日に鎌倉で実施した「1冊の本に託して死生観を語る」合宿研究会には大利さんは病気が進行して出席できなかった。2008年7月16日に予定していた報告は資料を野口幹夫さんが代読して進めた。「チベットの歴史と仏教」(2008年7月)これが大利さんの最後の報告であり、この報告書が絶筆になった。
大利さんが現役時代を180度転換させて退職後「世界の被圧迫民の研究」に打ち込まれた姿を見て、私もいつかこの問題に取り組みたいと考えてきた。昨年1月例会の「世俗社会を離れて信仰に生きる人々」―ロシア旧教徒とアーミッシュー報告は、ロシア辺境の地やシベリア、日本に渡って自分たちの信仰を守り抜いた人々、ドイツからアメリカへ移り住んで昔ながらの信仰を送る人たちを取り上げた。今回は「被圧迫民族問題」報告の第2弾である。