2021年 05月 10日
「沖縄久高島のイザイホー」の再編集のためのクラウド・ファウンディング
科学映像館副理事長の岡田一男から以下の趣意書が届きました。ご協力ください。
「私の若いころの作品に、1978年12月に沖縄久高島で挙行された、今のところ最後のものとなったイザイホーのカラー16㎜記録映画、「沖縄久高島のイザイホー」第一部・第二部102分、1979年があります。この作品は、私にとって、フィールドで民俗祭礼を本格的に記録する初めての機会であり、当時、民俗誌映像は、こうあるべきと考えていた全てを注ぎ込んだものでした。財団法人下中記念財団EC日本アーカイブズ(下中邦彦理事長・岡田桑三所長)で立案した企画に、放送文化基金の特別プロジェクトで活動されていた本田安次先生の主宰される伝統文化財記録保存会が合流して下さり、東京シネマ新社も1/3強の製作経費を負担して記録に取組みました。久高島をはじめ沖縄の信仰の写真による記録に取組まれていた比嘉康夫さんを通じて、島の祭祀を取り仕切っていた西銘シズさんと民俗地理学者、仲松弥秀先生の教えを受けながら撮影設計を行って行きました。これが最後の機会になるとは、全く予想していませんでしたが、およそ11分に一度はフィルムの詰め替えの必要がある中、事象の撮り逃しへの恐怖感から4台の同期録音カメラを使い、およそ、撮影を許された(公開された)儀礼の全てを頭から尻まで、シームレスにおよそ、1,000分のフィルムに収めました。
それを、個別の儀礼ごとに無省略でまとめ、国際学術映像収集機関、エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ(ECフィルム)に収める予定でした。実際に1979年秋に東京と大阪で開催されたEC国際編集会議で予備的な報告上映を行っています。ところが、長尺民族誌映像におけるナレーションなどECフィルムへのまとめ方を巡る問題、ゲッティンゲンの本部発で行くのか、東京発で行くのかという公開機関を巡る問題に加え、財政上の困難から、逡巡・停滞しているうちに、1990年代半ばにECフィルムの国際的な活動自体が中断してしまい、機会が失われたままになっていました。
色々な紆余曲折があったのですが、これらすべてのフィルムを2K-Full画像(2048x1556ピクセル)にデジタル化し、音声テープのデジタル化と合わせ、学術的な整理を加えてアーカイブ化し、現代の研究成果と共に広く公共財として公開し、地元久高島にも成果を還元しよう、文化伝承に役立てようというプロジェクトを、東京文化財研究所を中心に非営利の任意団体、文化財映像研究会を立ちあげました。画像情報のデータベース化には、先行例である、ヴィジュアル・フォークロアの北村皆雄さんが中心となって、1980年代前半に取組まれた久高島年中行事の記録のデータベース化が10年ほど前に行われています。年間26回と言われる年中行事の積重ねの上にイザイホーがあり、イザイホーと個々の年中行事は切っても切れない間柄です。何とか統合された同一のプラットフォームでのイザイホーと年中行事のデータベースへの展開と発展が実現できればと思っています。
プロジェクト自体、4-5年がかりの長期戦となり、経費も2,000万円はかかるということで、出だしをクラウド・ファウンディングによる資金調達と、各種助成金や、科研費獲得などで賄う計画です。第一期のクラウド・ファウンディグを600万円目標で、いよいよ5月10日から6月30日で行います。
1986年に最後のフィルム作品「Lords of Hokkaido」を完成以来、本格的なフィルム作品製作から遠ざかっており、いわばデジタルシネマの手法である24pデジタル画像にデジタル音声の音合わせを行うのは、人生初めての経験で、78歳になった身には至難のきつい作業であることは、十分承知しています。未だ気力を保っているうちに、何とか若い世代の人々が、ハンドリングできるような状態まで持っていこうと決心した次第です。
今回のクラウド・ファウンディングは、目標額に到達できなかった場合は、応募者に返金される、オール・オア・ナッシング型を採用しています。第一期としては、全フィルムと音声のデジタル化、音付、2K-full、24p画像によって、2K-DCP版「沖縄久高島のイザイホー」約107分の完成と、未完成公開作品「沖縄久高島のイラブー」約40分の公開を目指します。慎重に検討する必要がありますが、フルスクリーン16:9とすることも視野に入れています。
沖縄の日本復帰50年にあたる2022年に、それにあわせて持たれるであろう日本映像民俗学の会宮古島大会を含め、現地、久高島や、那覇・東京において中間成果発表が出来ればと願っています。中間成果発表を土台にして、第2段階に進み、各儀礼ごとのデータ化と作品化、現代の民俗学による検証のまとめを行い、最終成果の公開を、那覇首里城の復元が達成されるであろう2026年に照準しています。一般公開版も学問的検証次第では、装いを新たにした改訂第三版を制作することとなるかも知れません。
クラウド・ファウンディングの成否は、一つに初動のスピードに懸っていると言われます。つきましては、みなさまの早期の格別のご支援をお願いいたします。
お時間のある方は、以下をご笑覧ください。
クラウド・ファウンディングHP https://readyfor.jp/projects/izaiho
フライヤーPDFダウンロード http://tokyocinema.net/flyer.pdf
文化映像研究会FB https://www.facebook.com/izaiho
東京シネマ新社イザイホーページ 当初予定返礼品の部分クリップも見られます。
http://tokyocinema.net/izaiho.htm
同、デジタル化プロジェクトページ 模索状況を公表しています。
http://tokyocinema.net/izaiho202X.html
NPO法人科学映像館1979年版第一部 http://www.kagakueizo.org/create/tokyo-sinemashinsya/108/
NPO法人科学映像館1979年版第二部 http://www.kagakueizo.org/create/tokyo-sinemashinsya/109/ 」