2022年 06月 07日
日本経済新聞電子版コラム「春秋」で科学映像館が紹介される
日本経済新聞(6月6日) 電子版で「春秋」に科学映像館の活動内容と著作権問題が取り上げられた。著作権は作品を守り、有効に活用されるためのものと理解しているが、真逆のこともあり、作品を秘蔵化し、活用できないこともある。来年度の著作権法の改正には、古い貴重な作品を規定内で、だれでも、いつでも、自由に閲覧でき様になることを期待したい。「作品を生かすも、殺すも著作権」
「科学立国を目指す戦後の日本で盛んに作られたのが科学映画だ。工場、鉄道、建築、災害とテーマは幅広く、学校などで上映された。今では貴重な記録をNPOがデジタル化し「科学映像館」の名でネット公開している。電気が来た村で喜ぶ子供らの笑顔が印象に残る。
▼フィルムの劣化から映像を守る活動だが、NPOによれば救えるのはごく一部だ。資金や人手の不足に加え権利関係が大きな壁になる。製作会社が廃業し別の法人が一時預かっている作品は再利用しにくい。大手企業が保管しているものも、さまざまな権利に細かい配慮がいる場合がある。こうして死蔵され寿命を迎える。
▼テレビドラマも同じだ。関連業界が設けた尋ね人のサイトには、刑事ドラマ「太陽にほえろ!」や大河ドラマ「篤姫」といった名作の出演者の名が並ぶ。芸名しか記録になく存命かどうか確認困難な方もいる。亡くなられたなら権利の相続者は誰か。小説や絵画も含め、権利者不明作品の扱いは海外でも難題となっている。
▼政府が知的財産活用策として著作権法を改正し、古い映像や音楽を利用しやすくする方針だと報じられた。作り手を育てるための法律が作品の命を縮める現状は、確かに何か変だ。人の手による作品は、広く長く見られてこそ作者や演者の喜びになるのではないか。知恵を出しあい埋もれた文化や財産をうまく生かしたい。