2007年 08月 29日
科学映像撮影の舞台裏、生物資料の提供 その2
そこでRose の還流培養装置で新生児の頭蓋片の培養を試みることに(Atlas of vertebrate cells in tissue culture. by George G Rose, ACADEMIC PRESS 1970)。この装置は、培養器に細いチュウブで培地を還流し、栄養分と適量の酸素を培養組織片に補給する仕組み。肝臓、腎臓、唾液腺などの分化を促し、維持できると言った画期的なものであった。
新生児マウスの骨片をこの装置で培養すると、3,4日後には、骨片が破壊され、跡形もなくなるいった想定外のことが起こったのである。破壊された骨片の周辺には、多核の大型の細胞が出現。破骨細胞による骨吸収が起こったのであろうかと。ポンプで培養器に送り込む培地の圧が、破骨細胞を誘導、骨破壊を起こしたのではと考察。小林さんは形成ありきで、骨の破壊にあまり感心を示さなかったが、とりあえず撮影を開始。来学以来、5ヶ月目の映像である。破骨細胞の動態を4分に1駒の割合で撮影した2カットの映像示すことが。
骨破壊のシャープな局所像が、骨片の厚さ故に捉えきれないもどかしさ。しかし静止像のみで観察してきた私たちにとって、今回の映像は興味深い現象を示してくれた。破骨細胞の活発な運動、いわゆる波状縁の動き。そして働きを終えた細胞が、最後に液胞化して死滅した映像。アポトーシス(?)を初めて捉えた映像であろう。今回の映像は、破骨細胞の動態以外に、破骨細胞の起源は、その形成は、周辺の細胞との関係はなどなど、今後への宿題も。骨芽細胞による形成の映像は次回に。