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科学映画制作の舞台裏

 今回は映画制作の最終の仕事、ナレイションについてのお話を。小林さんは科学映画を総合芸術と考え、映像ばかりでなく音学、ナレイションにも気を使われた。音楽では、新進作曲家であった武満 徹、一柳 慧氏らに映画にマッチした作曲を依頼。またナレイターとしては、城 達也、小林 恭次らがしばしば担当している。筆者が拘わった彼等による録音の様子を。

 監修、企画者などと、映像と脚本の調整を終えた後、最終録音に。ナレイターは、スタジオ入りするや、あらかじめ目をとうした脚本の疑問点、映画の内容、専門用語などについて質問、検討後、画像を見ながらの下読みが。ここで始めて本番へ。映像単位でナレイションを収録。その間、ナレイションと映像の微妙な調整が、繰り返し,繰り返し行われる。10数分の科学映画でも、4時間、時には6時間、ぴんーと張り詰めた緊張下での収録が。小林さんの脚本は、ひかえめで、押し付けがましくないこと。時に、十分理解できないことも。しかし、これは、それぞれの人が、それぞれの立場で自然のままに自由に、観てもらいとの考えからである。

 美しく穏やかな音楽にのせて世界各地を紹介する『ジェットスツリーム』は、城達也氏の代表的な番組。一般的には知られていないが、小林作品で最も多くのナレイションを担当された声優が、城氏であった。その数は数十編と思われる。OSTEOCYTEでは、城氏の美しく心安らぐ声でナレイションが、さすがだなと。しかしこれが、科学映画ナレイターとして最後の仕事となった。半年後がんで亡くなられたのである。享年64歳、残念の極みである。

 また科学映画のナレイションを初めて試みてくれたのが、戸田恵子さん。アンパンマンの吹き替えで有名であった彼女が、テレビ界に進出1ヶ月前の収録。スタジオ入り直後、彼女は朗読調から語り調まで数タイプの見本を。語り調でお願いしたのが、破骨細胞分離の映画である。録音中、彼女は服のすれる微かな音を察知、上着を着替えての録音。さすが感性豊かな声優さんだなと。その後、彼女は一躍有名となった。彼女による科学映画のナレイションは2度とないことかも。科学映画でも、ナレイターの果たす役割は大変大きい。個性豊かな声優が全力で挑んでいるナレイションも、お楽しみいただきたい。
by rijityoo | 2007-10-01 09:40 | Comments(0)