2007年 08月 31日
科学映像撮影の舞台裏、生物資料の提供 その3
材料を若くすればとの意見のもと、胎児マウスの骨片を。しかも出来る限り若い胎生12日目で骨形成が始まったばかりの骨片を用いた。1週間前後で何とか網状の新しい骨組織が得られる目途が。

しかし1カットは残念ながら、途中から細菌の感染があり、1部の使用のみ。一場面は新に形成された骨組織に吸収が起こる。まさに骨改造を捉えることが出来たのである。大変感激の場面である。他の映像では、若い細胞が盛んに分裂、分化後、細胞の周辺にコラーゲンなどからなる骨基質を形成。最終的には、基質が骨小腔を形成、細胞自身は骨細胞となる一連の骨形成像を始めて捉えることが。



小林さんの生命科学映画では、新しい題材に挑むことが多いため、毎回その準備に大変な苦労が。今回の骨組織の撮影は小林さんにとっても初めてのことである。ガラス内での骨形成は、文献的報告もなく、全くゼロからのスタートであった。しかも骨の形成にはある程度の厚さが必要。しかし厚いと、当然、細胞の観察はできない。しかも他の組織に比べてゆっくりとした代謝。そのため特有な培養法の工夫とスタッフの根気ある撮影で生まれた力作と思う。以上の記載が視聴者に何かの参考になればと。次回はほぼ1年かけたこの映画の制作後談。ご期待を。
2007年 08月 29日
科学映像撮影の舞台裏、生物資料の提供 その2
そこでRose の還流培養装置で新生児の頭蓋片の培養を試みることに(Atlas of vertebrate cells in tissue culture. by George G Rose, ACADEMIC PRESS 1970)。この装置は、培養器に細いチュウブで培地を還流し、栄養分と適量の酸素を培養組織片に補給する仕組み。肝臓、腎臓、唾液腺などの分化を促し、維持できると言った画期的なものであった。

骨破壊のシャープな局所像が、骨片の厚さ故に捉えきれないもどかしさ。しかし静止像のみで観察してきた私たちにとって、今回の映像は興味深い現象を示してくれた。破骨細胞の活発な運動、いわゆる波状縁の動き。そして働きを終えた細胞が、最後に液胞化して死滅した映像。アポトーシス(?)を初めて捉えた映像であろう。今回の映像は、破骨細胞の動態以外に、破骨細胞の起源は、その形成は、周辺の細胞との関係はなどなど、今後への宿題も。骨芽細胞による形成の映像は次回に。


2007年 08月 27日
科学映像撮影の舞台裏、生物資料の提供

「The Bone」 ,「The Bone II」,「Osteocyte」、の生物試資料を
提供した。今回はその撮影の舞台裏に焦点を当てたお話。その第1回は
「The Bone 」についてであるが、この映画はある製薬会社の新薬発売を記念して企画されたもの。小林米作氏は単なる商業映画の制作ではなく、骨の生きた営みに迫る映画をと。

当時ガラス内での骨の形成はまだ報告もなく、勿論その映像もなかった時代であった。今日、耳にする再生医学の魁であった。そのため器官の分化を促し、維持でき、しかも観察に適した培養装置を留学先から持ち帰った筆者にお呼びがかかったのである。3部作制作の足掛け15年間の舞台裏を。
1978年11月の中旬、小林さん以下ヨネプロの数名のスタッフが、トラックいっぱいの機材と共に来学、早速設営に着手。しかし提供できる資料の目どは全くたたず、悪戦苦闘のうちに年末へと。 年が明けて、2つの方向が。スタッフは長骨発育の映像化。私たちは細胞レベルでの骨形成と。しかし両者とも中々の資料作りである。

今回は長骨発育の映像はいかにして撮影されたかを中心に。小林さんは新生児マウスの前足の指の発育に着目。固定のまま20日間生育させ、撮影することを企画。最初の1週間、まず注射器でのミルクの補給を考えたが、飼育は無理と判断。

ついで何日か毎に発育した同腹のマウスと交換、撮影へと。では固定と撮影は?体を固定したマウスの指を露出して硝子板にボンドで固定し、下方から照明。表面の乾燥を防ぐため、油を塗布しての2ヶ月にわたる撮影であった。軟骨モデルから軟骨の石灰化、血管の骨髄への進入、骨への置換と一連の発育動態の映像化が。この撮影は普通速度で行い、発育段階に沿い、積み重ねたものである。 次回は細胞レベルでの骨形成は?
2007年 08月 24日
HD化で音学も甦る
今回のHD化は映像のみならず、一柳氏らによる音楽も見事に甦ったようである。小林健次氏によると、HD化した生命誕生の音楽では、弦を弾く音,ピチカート、が再現しているとのこと。巷のDVDがよくなかったのではと思い、東京光音に。やはり今回のHD化では、音の情報量も多いらしい。しかし、当時の録音システムには限度があり、甲高い音は致し方ないようである。
2007年 08月 22日
時には無声映像も
科学映画の新たな活用方法が、ここに見出せるのでは。例えば家庭での親子の対話、セミナーのフリートーキングの教材として、また理解度テストの材料としても。